宮泉銘醸取材:否定から始めた酒造り②

造りの経験のない新人が集まり、
宮泉のそれまでの全てを否定するところから始まった宮森さんの造り。
その造りへの徹底したこだわりは蔵人、蔵の設備、
そしてそこから生まれる日本酒、その全てを変えて行きました。

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以前は畳2枚ほどの広さだった研究室、
先の杜氏はその研究を絶対に蔵人に公開しようとはしませんでしたが、
そんな馬鹿らしいことは無いと宮森さんはその研究室を広く開放し、
蔵人達が経験と知識を得られる場所へと変えていきました。
蔵の中の設備にも投資を重ね、
不純物を徹底的に取り除くため仕込み水のフィルターは通常よりも多く、
酒米は大量に蒸かすよりも少量のほうが美味くなるため、
浸水させるための容器も小分けに。
それまでの蒸米の移動では最初ものと最後のもので温度差が出て
品質にも差がでてしまうので特注のクレーンを入れ移動をスムーズにし、
タンクの中での長期保存は空気に触れる割合が多い分
酒質に影響が出でしまうため瓶に詰め保存とし、
搾りを行う工程は一番空気に触れる工程なので、その室内さえも温度管理が出来るように、
そして極力空気に触れないような設備へと変化させていきました。
それは全ての工程においてその品質を最高の状態にするための設備投資であって、
造りにかける手間は減るよりもむしろ増えたかもしれません。

それまでの全て、通念とされたことまでも否定するところから始まった宮森さんの造り、
それは伝統の重んじられる世界の必ずしも小さくない反発を受ける中で、
誰をも納得させるため、仲間となった経験のない蔵人達と美味い酒を造るため、
求める日本酒に対してより理論的に、
そして誰よりも真摯に向き合う必要があったのかもしれません。

取材の間も蔵人たちは掃除に余念が無く、温度が一定にそして清潔に保たれた蔵の中、
その随所に蔵人達の強い意思が感じられました。